修理カルテ

SEIKO

● KING SEIKO HI-BEAT5625-7110

関東地方 Y様からのご依頼品です。
オーバーホールと風防ガラス交換のご依頼でしたが、
プラスティック風防(ドーム型)への交換となりました。
更にアンティーク風に改造です。

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電子通信が一般的な今日ですが、 Y様から手書きのあいさつ状を頂きました。
うれしいですね。ネットでのご依頼は顔が見えないので、 こうしてお手紙を頂きますと、親近感が沸いてしまいます。
ガラス風防の交換の件も私からご提案させて頂きました。
喜んで頂けてると良いのですが。。。

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現物の確認です。 ガラス風防が割れてしまっていますね。
プラスティック風防に比べるとキズには強いのですが、 衝撃で割れてしまうことが・・・
今回の修理で外見上も変化することでしょう!

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さて、今回ご依頼のKS 5625-7110は1ピースケースです。(裏蓋の無いタイプ)
風防から分解して行きます。

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ムーブメント本体が出てきました。風防のしたに防水パッキンとリングがついています。
1ピースケースは風防⇒ムーブメントとすべて時計表面から分解して行きます。

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全分解画像です。
HI-BEATともなると繊細な部品が多いですね。

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ゼンマイ(香箱)の油も減ってしまっています。
洗浄・注油をしっかり行います。

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ムーブメントの組上げ画像です。
KSはLM(ロードマティック)とほぼ同じ作りですので、親しみがあります。
SEIKOを有名にした名機ですからね。。。

 

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文字盤裏の組上げ画像です。
組上げながら動作確認をしていると、日付の早送りが出来ないことに気付きました。

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原因は日送り車にありました。
刃先がプラスティックで出来ているので、何らかの無理がかかって亀裂が入ってしまったようです。在庫のLMから部品取りですね。

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こういう時にLMの出番です。
KSと違いLMは大量に生産されていたので、こんなこともあるかと部品取り用にストックしておきました。つまりは故障し易い場所なんですね(^^;)

今回は今後破損がないように金属歯車のタイプにしました。これで日送り(早送り)が出来るようになりました。部品代はサービスです。

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風防まわりの修理に取り掛かります。

今回は私がガラス風防⇒プラスティック風防(ドーム型)という提案をさせて頂きました。
画像右上が比較画像です。丸みをおびたドーム型がお分かり頂けるでしょうか?
右下画像が完成予定画像です。

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SEIKO S-314という紫外線で固まる接着剤を使います。
右画像はUVテスターという機械で紫外線を人工的に作ります。
いわば日焼けマシーンのようなものですね。

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プラスティック風防の完成です。
どうです?この丸み。。。
自己満足???

    

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ここでKSの特殊機能をご紹介。

遅進調整は裏蓋を開けて直接ピンセットで行うのが普通ですが、 5625-7110KSは
バンド接合部6時位置にネジ蓋があり、そこから調節が出来ます。
1ピースケースは裏蓋が無いのでムーブメント(テンプ)を出すのも一苦労。分解せずに簡単に調節出来るような配慮なんですね!KS HI-BEATのみに搭載された特殊機構ですネ! ※画像16でも確認頂けると思います。

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上下から圧着します。
このときに風防にキズやひびが入らないように注意します。

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ドーム型の風防になって生まれ変わりました。 少し前のKSはこんな感じでしたね。

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遅進調整も終えて修理完了です。
Y様はドーム型風防を気に入ってくれてるのでしょうか???

ありがとうございました。