修理カルテ

掛時計

● セス・トーマス

大阪府 F様からのご依頼品
云わずと知れた名品です。
ゼンマイが切れてしまったようです。
オーバーホールと一緒にとご依頼を頂きました。

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八角掛時計の元祖とも云えるセス・トーマス 機械番号 81/4 です。

多くが破損やガラスが割れてしまったりしているのですが、今回お預かりのセス・トーマスはほぼ完品ですね。
しいて言うならば左上の外装飾りが1つ無いようです。

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歪んだガラスや振り子は当時のままです。
ゼンマイカギは違うようですが、カギが当時のままというのは滅多にありませんね。

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保存状態の良さを画像に残しておきましょう!
下段のガラス絵や振り子室ラベルは今や貴重品です。

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ムーブメントも綺麗ですね。
セス・トーマスは歯車が特徴的ですね。歪みや変形に強い設計になっています。

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この「S・THOMAS・・・」の刻印が由緒正しき時計の証しです。

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故障の原因のゼンマイです。
時打ち側のゼンマイが切れてしまったようです。

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ゼンマイの中心付近が切れてしまっています。
切れた瞬間に一気に解けて接続歯車を変形させてしまうこともしばしばなんですが・・・。

右画像は時間動作側のゼンマイです。コチラは大丈夫そうです。

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分解時に解けないように針金でゼンマイを固定しておきます。

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ムーブメントの分解画像です。 両画像とも左側が時打ちで右画像が動作側になります。

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切れてしまったゼンマイを交換します。
この位の年代モノになると強い力を発生する新品のゼンマイを使うのは危険です。1度なめしたゼンマイを使います。

下段画像ですが、やはりゼンマイは切れた瞬間に歯車軸が変形してしまっていました。コチラも修正をします。

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両方のゼンマイが揃いました。
ゼンマイを修復中にムーブメントの洗浄が終わっていますので、これから組み上げ作業に移ります。

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各歯車やバネを地板に乗せて、上からもう1枚の地板で挟み込みます。
すべての歯車が2枚の地板で固定されていますので、組み上げにはある程度の力とコツが必要になります。

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セス・トーマスは時打ちスピードが早いのが特徴でもあるのですが、あまりにも早く感じましたので、空気抵抗を増やして回転速度を抑えました。

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ムーブメントが組み上がったら、文字盤や針は付けずに外箱にムーブメントのみを装着して調整をします。

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ある程度の調子が分かったら長針(分針)のみを付けて、様子をみます。
その後調子が良ければ、文字盤・短針(時間針)を付けます。そしてまた調子をみます。

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完成です。

また時打ちが聞くことができました。ボンボン時計という名の由来の音ですね。

ありがとうございました。